自分一人でできると思っていた驕り。専門家の力を借りて、事業の新たな可能性を見出した道のり
長年培った経験への自信と、その裏側で生まれた「驕り」
私は、自身の経験とスキルを頼りに、長年一人で事業を切り盛りしてきました。特に立ち上げ初期の頃は、がむしゃらに働き、試行錯誤を重ねる中で掴んだ成功体験が大きな自信となっていました。その経験は確かで、多くの困難を乗り越える力になってくれたと思っています。
しかし、いつからか、その確かな経験が「自分一人で何でもできる」という、見えない壁を作り始めていたのかもしれません。市場は常に変化し、新しい技術や手法が次々と生まれる中で、私はどこかで「今までのやり方で大丈夫だろう」「自分にできないことはない」と、立ち止まっていたのです。
事業が緩やかに停滞し始めたのは、その「立ち止まり」に気づかぬふりをしていた頃です。売上は伸び悩み、新しい顧客層へのアプローチもうまくいかない。かつての勢いはなくなり、漠然とした不安が募るばかりでした。それでも、「きっと一時的なものだ」「もっと努力すれば」「自分なら乗り越えられるはずだ」と、がむしゃらに働くことや、これまでの成功パターンを繰り返すことに固執していました。
停滞の中で感じた孤独と、過去の影
事業の停滞は、私に深い孤独感をもたらしました。これまでは「自分がすべてをコントロールできている」という感覚がありましたが、どうすれば良いか分からない状況に陥り、その感覚は脆くも崩れ去りました。誰かに相談しようにも、「こんな状態を話したら、信頼を失うのではないか」「『あの人ももうダメだな』と思われるのではないか」という恐れが先に立ち、誰にも弱みを見せられませんでした。
過去の失敗経験や、思い通りにいかなかった出来事が脳裏をよぎることもありました。あの時の無力感や、自分を責める気持ちが、再び心を覆い始めるような感覚です。新しい挑戦への一歩を踏み出す勇気が持てず、自己流のやり方の中に閉じこもってしまう。それはまるで、過去の自分が作った檻の中に自ら閉じこもっているかのようでした。
「きっと、私にはもう新しいことを学ぶ力はないのかもしれない」「時代の変化についていくのは無理だ」そんな否定的な思いが頭の中を駆け巡り、自分自身の可能性に蓋をしてしまっていた時期です。
勇気を出して踏み出した、外の世界への一歩
そんな苦しい日々が続く中で、ある出来事が私の考え方を変えるきっかけとなりました。それは、同業者の集まりで、自分より若い世代の方が、新しいデジタルツールや全く異なるアプローチで大きな成果を上げているのを知った時でした。彼らの話を聞きながら、私は自分がどれだけ世間から取り残されているのかを痛感し、同時に、素直に「すごいな」「どうやっているのだろう」という興味が湧いてきたのです。
その時、「自分一人で解決しようとする限界」を認めざるを得ませんでした。そして、「もしかしたら、自分にはない視点や知識を持っている人の助けが必要なのかもしれない」という考えが、恐る恐るですが心の中に芽生えました。
勇気を振り絞って、以前から気になっていた経営コンサルタントの方に連絡を取りました。正直、最初はとても緊張しました。自分の事業の現状や、どうすれば良いか分からないという弱みを見せることに抵抗があったからです。しかし、コンサルタントの方は私の話を遮ることなく、じっくりと耳を傾けてくださいました。そして、私の事業の良い点、課題となっている点、市場の動向などを客観的に分析し、具体的な改善策や新しいアプローチ方法を提案してくださったのです。
初めて専門家からアドバイスを受けた時、私の凝り固まった考え方が少しずつ溶けていくのを感じました。これまで自分が見ていた世界とは全く異なる視点や、知らなかった知識があることを知り、目から鱗が落ちるような感覚でした。最初は提案された新しいやり方に戸惑うこともありましたが、一つ一つ丁寧に教えていただき、実践していく中で、徐々にその効果を実感できるようになりました。
新たな学びと連携が拓いた、事業と人生の可能性
専門家のサポートを得ることで、私の事業は再び動き始めました。停滞していた売上は徐々に回復し、新しい顧客層を獲得するための具体的な手法を身につけることができました。何よりも大きかったのは、自己流に固執していた頃には気づけなかった、事業の新たな可能性を見出すことができた点です。これまでの経験で培った「核」となる部分を大切にしながら、新しい知識や他者の視点を柔軟に取り入れることで、事業の幅が広がり、新たなサービスや展開も現実味を帯びてきました。
この経験から得た最大の学びは、「自分一人で全てを抱え込む必要はない」ということです。そして、「助けを求めること、他者から学ぶことは、決して恥ずかしいことではなく、むしろ事業や自分自身を成長させるための重要なプロセスである」という気づきです。プライドを手放し、素直に他者の知恵を借りる勇気を持つことで、一人では決して辿り着けなかった場所に到達できることを実感しました。
現在、専門家との連携は続いており、共に事業のさらなる拡大や新しい取り組みについて考えています。また、この経験を通して、同じように事業の壁にぶつかっている経営者の方々の力になりたいという気持ちも生まれてきました。過去の困難や「驕り」から学んだことは、私にとってかけがえのない財産であり、今後の人生や他者貢献に繋がる光となっています。
困難は、新たな「つながり」への扉
もし今、あなたも一人で困難を抱え込み、自己流のやり方に限界を感じているなら、勇気を出して誰かに相談してみてはいかがでしょうか。それは専門家である必要はないかもしれません。信頼できる友人や仲間、メンターなど、あなたにとって頼れる存在に話を聞いてもらうだけでも、状況は少しずつ変わるはずです。
かつて私がそうだったように、困難は私たちを孤独に閉じ込めようとするかもしれません。しかし、一歩踏み出し、他者と繋がることで、思ってもみなかった解決策や、新たな可能性が拓けることがあります。あなたの経験は決して無駄にはなりません。それに新しい視点や知恵が加わることで、きっと想像以上の力が生まれるはずです。自分一人でできることには限りがあります。しかし、他者と力を合わせることで、乗り越えられない壁はないと、私はこの経験を通して強く信じています。