過去の心の傷が閉ざした扉。トラウマを乗り越え、人との繋がりの中で事業を再生するまで。
人との間に壁を作り、事業が停滞した日々
私の人生において、過去の出来事によって心に深く刻まれた傷は、長く私を苦しめました。それは、信頼していた人からの裏切りや、否定的な言葉を浴びせられた経験など、複数の出来事が積み重なった結果でした。特に事業を営む上で、人との繋がりや信頼関係は不可欠であるにも関わらず、その心の傷は私に「人は信じられない」「深く関わると傷つく」という強い思い込みを植え付けてしまったのです。
次第に私は、事業で必要とされるお客様や取引先とのやり取りにおいても、どこか心の扉を閉ざすようになりました。表面上は丁寧に対応していても、それ以上の深い信頼関係を築くことから無意識に逃げていたのです。新しい人との出会いを避けるようになり、既存の関係も希薄になっていきました。その結果、事業は徐々に活気を失い、成長が止まってしまったのです。
当時の私は、常に言いようのない不安感や孤独感を抱えていました。「このまま一人で事業を続けていけるのだろうか」「誰かに助けを求めたいけれど、また裏切られるのではないか」という恐れが、常に頭の中にありました。過去の辛い記憶が突然フラッシュバックし、動悸が激しくなったり、夜眠れなくなったりすることも少なくありませんでした。心身ともに疲れ果てていた状態だったと思います。事業の停滞以上に、心が壊れていくような感覚が私を追い詰めていました。
心の傷と向き合う決意、そして小さな一歩
この状況から抜け出したい、このままでは本当に何もかも失ってしまうという強い危機感が、私に心の傷と向き合う決意をさせてくれました。しかし、何から始めれば良いのか全く分かりませんでした。長い間、自分の感情や内面と向き合うことを避けてきたからです。
まずは、勇気を出して専門機関の相談窓口に連絡を取りました。最初は自分の内面を語ることに強い抵抗がありましたが、担当の方がじっと耳を傾けてくださり、安心できる空間を提供してくださったことで、少しずつ自分の感情を言葉にできるようになりました。そこで、自分が抱えている困難が過去のトラウマに深く根差していること、そして、それは決して自分の弱さだけが原因ではないことを知りました。
相談を通して、少しずつ自己理解を深めていきました。なぜ自分が特定の人や状況に対して過剰に反応してしまうのか、なぜ人との深い関わりを避けてしまうのか。そのメカニズムを知ることで、「これは仕方のないことだったのだ」と、過去の自分を受け入れられるようになったのです。そして、心の傷を癒やすためには、安全な環境で少しずつ「人との繋がり」を再構築していく必要があると教えていただきました。
そこで始めたのが、無理のない範囲での小さな関わりです。地域の交流会に短時間だけ参加してみる、馴染みの店の店員さんと少しだけ世間話をする、信頼できる知人に「最近、事業が少し停滞していて…」と打ち明けてみる、といった、本当に些細なことから始めました。最初はやはり怖い気持ちがありましたが、意外にも温かい反応が返ってくることが多く、「もしかしたら、大丈夫なのかもしれない」という希望の光が少しずつ見え始めました。
再び人との繋がりの中で輝き始めた事業と人生
心の傷が少しずつ癒え、人との関わりに対する抵抗感が薄れていくにつれて、私の事業にも変化が現れ始めました。お客様との会話が以前よりも弾むようになり、深いニーズを聞き出せるようになりました。取引先との連携もスムーズになり、新たなビジネスチャンスに繋がる提案を受けたり、共同で企画を進めたりすることも増えました。閉ざしていた心の扉が開き、再び人との間に信頼関係が築かれることで、事業全体に活気が戻ってきたのです。
過去の経験から得た学びは、今の私にとってかけがえのない財産となっています。心の傷を抱えている時、どれほど孤独で、希望が見えなくなるのかを身をもって知っているからです。その経験があるからこそ、お客様や取引先、そして周囲の人々の抱える悩みや困難に対して、以前よりも深く共感し、寄り添うことができるようになりました。それは、ビジネスの上でも、人間関係の上でも、非常に大きな強みとなっています。
現在、私は事業を継続・拡大しながら、過去の私と同じように心の傷や人間関係の困難に悩む方々への支援活動にも関心を持つようになりました。自身の経験を語ることで、同じような苦しみの中にいる人が「一人ではない」「希望はある」と感じてくださるなら、それは私にとって最高の喜びです。過去の困難は、私から多くのものを奪いましたが、それ以上に、人としての深みや、他者への共感力、そして困難を乗り越える力という、大切なものを与えてくれました。
困難の中に希望を見出す力
過去の心の傷は、時に私たちから希望を奪い、未来を閉ざしてしまうように感じさせます。しかし、私は自身の経験を通して、どれほど深い傷であっても、時間をかけて丁寧に向き合い、適切なサポートを得ることで、必ず癒える道があることを知りました。そして、その経験が、その後の人生や事業において、かけがえのない力となることも。
もし今、あなたが過去の困難によって心に傷を抱え、一人で苦しんでいるとしたら、どうか諦めないでください。勇気を出して誰かに助けを求めてみてください。小さな一歩でも構いません。あなたの周りには、必ずあなたを理解し、支えてくれる人がいます。そして、あなたが乗り越えた困難は、きっと誰かを照らす光になるはずです。希望は必ず見出せます。